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古代エジプトの謎9選(前編)— ミイラは蘇る? 墓を掘ると呪われる?

大城 道則

古代エジプトに興味を持った人が最初に抱く「素朴だけど聞きづらい疑問」を9つ集めて、本気で答えてみる企画です。映画の世界と研究の現実、その間にある面白さをお伝えできればと思います。前編は4問です。

Q1. 呪文を唱えたら、ミイラは蘇るんですか?

まず面白いのは、「復活の呪文」自体は本当に存在するということです。古代エジプトには蘇りに関する呪文がいくつも残されていますし、死者が動き出す物語も実際に伝わっています。ただし、ミイラは乾燥した遺体——生物学的にいえば、人間というよりカツオブシに近い状態です。考古学や歴史学以前の問題として、動き出すことはありません。私も調査でミイラと対面することがありますが、いまのところ一度も動いてくれたことはありません(笑)。

Q2. 墓を発掘したら呪われるんですか?

有名なのが「ツタンカーメンの呪い」で、発掘関係者が次々に亡くなったという伝説です。なかには発掘関係者がタイタニック号に乗っていたから船が沈んだ、という説まであるのですが、これはもう「風が吹けば桶屋が儲かる」の世界ですね。

実際のところ、当時の著名な研究者はそもそも高齢の方が多く、発掘後何十年も生きられないのはむしろ自然なことです。発掘直後に亡くなったカーナヴォン卿はもともと体が弱かった人物ですし、発掘の中心人物だったカーター本人は長生きしました。ただし「これを暴く者は…」といった呪いの文言が墓に刻まれること自体は本当にあります。名前を大切にし、呪いや護符の文化を持つという点で、古代エジプトは日本人の感性と意外に近いところがあるのです。

Q3. クレオパトラが死んだとき、古代エジプト人は滅亡したんですか?

そもそもクレオパトラはマケドニア系ギリシャ人の王朝の出身で、「純粋な古代エジプト人」ではありません。そして民族というのは、王朝が滅んでも簡単には消えないものです。ヒエログリフはローマ時代に途絶え、キリスト教、次いでイスラームの到来で宗教も大きく変わりましたが、人々の暮らしと血筋はずっと続いています。現代のエジプトの人々の中に、古代エジプト人から連なる系譜は間違いなく生きていると私は考えています。

Q4. エジプトの神官って悪い人なんですか?

映画では黒幕といえば神官、と相場が決まっていますね。ツタンカーメン暗殺説で疑われるアイも神官を兼ねた人物でした。実際の神官はというと、ヘリオポリスのラー神官団、テーベのアメン神官団など、神様ごとに神官団があり、大部分はごく普通の宗教者だったはずです。ただ、地位が世襲化して権力を握ると腐敗しがちなのは、古今東西変わらぬ人間の常。アマルナ時代の前後などには、実際に政治を大きく動かす神官もいました。「全員が黒幕」ではないけれど、「権力を持てば暗躍のチャンスはあった」——そのくらいが実像だと思います。

後編では「ピラミッドは墓か神殿か」など、残り5問にお答えします。

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