月刊エジプトニュース、2026年7月号です。6月・7月は休みなく仕事が入り、先週はアンデス文明研究会で2時間の講演をしてきました。慌ただしい前期でしたが、今月は大きなご報告があります。
ついに小説家デビュー? 8月に新刊が出ます
8月に、私にとって初めての「小説」が新書として刊行されます。タイトルは『現代にピラミッドを建設しようとしたら超大変だった話』。依頼を受けてから3年、最初の草稿とは主人公の年齢設定まで変わるほど編集者と推敲を重ねました。論文や研究書は何十冊も書いてきましたが、小説がこれほど難しいとは思いませんでした。歴史小説を書く方々を、心から尊敬するようになった3年間です。
エジプト学の知見をふんだんに盛り込んだ物語ですが、あくまでエンターテインメント。学生の皆さん、レポートや論文の参考文献には使えませんので、そこはご注意を(笑)。純粋に楽しんでいただければ嬉しいです。なお年内には、新王国時代を扱った真面目な新書ももう1冊刊行予定。こちらは裏取りに裏取りを重ねた、参考文献たっぷりの一冊になります。
今月のニュース: ルクソールで「パセルの墓」発見
さて今月のエジプトニュースは、ルクソール西岸の古代ネクロポリス、シェイク・アブド・アル=クルナで、これまで知られていなかった約3000年前の墓が発見されたという話題です。装飾の様式から第19〜20王朝(ラムセス朝)のものとみられ、壁には「パセル」という被葬者の名前が残されていました。
実はパセルというのは、新王国時代後半のかなり高位の人物に見られる名前です。古代エジプト人名事典を引くと、少なくとも2人の大物が見つかります。1人はセティ1世の王墓造営を指揮し、ラムセス2世に25年間仕えた宰相のパセル(テーベに墓TT106が現存)。もう1人は第20王朝、ラムセス9世時代のテーベ市長パセルです。今回の墓には奥さんとともに神々を崇拝する壁画が残っているそうなので、夫人の名前が読み取れれば、人物を特定できる可能性があります。
墓自体は盗掘を受けており、棺などの副葬品は失われているようですが、周辺の墓との位置関係や構造から、当時の埋葬の在り方について新しいことが分かるかもしれません。続報に期待しましょう。
9月からの再始動に向けて
9月からはエジプトでのプロジェクトが始まる予定で、現地でたっぷり映像も撮ってくるつもりです。公式ホームページの準備も進んでいます。後期からは動画の更新頻度も上げていきますので、どうぞお楽しみに。