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おおしろ教授の世界古代遺跡探訪①古代世界のアールヌーヴォー【ギョベクリ・テペ】

大城 道則

私がこれまで訪れてきた、あるいはいつか訪れたい世界の古代遺跡を紹介するシリーズ「世界古代遺跡探訪」。第1回に選んだのは、いきなりですが「まだ行ったことがない、けれどいま一番行きたい場所」。トルコにあるギョベクリ・テペです。

ピラミッドより7000年以上古い

ギョベクリ・テペはトルコのかなり東、シリア国境に近い場所にあります。年代はおよそ1万2000年前。エジプト最初のピラミッドであるサッカラの階段ピラミッドが約4700年前、イギリスのストーンヘンジでも紀元前3000年頃ですから、それらより数千年もさかのぼる、世界最古の石造建造物として知られています。1960年代には遺跡の存在自体は知られていたものの本格的な調査は行われず、1990年代半ばに改めて「ここには何かある」と掘り返したところ、この大遺跡が姿を現したという発見の物語も持っています。

直径約300メートルの範囲に、T字型の巨大な石柱がおよそ200本。1本あたり20トンほどもあります。現在は保存のための屋根が架けられ、見学用の通路も整備されて、世界遺産として観光客を迎える体制が整いつつあります。

「古代世界のアールヌーヴォー」

この遺跡を私が「古代世界のアールヌーヴォー」と呼びたくなるのは、石柱に刻まれた動物たちのレリーフのせいです。鳥、イノシシ、ハチ、ネコ科の猛獣、逆さまに彫られたトカゲ。後の時代の抽象化された表現と違って、どれも驚くほど写実的で、装飾として実に凝っています。文字もなく農耕も始まっていない時代に、周囲に住居の痕跡もない丘の上へ、誰が何のためにこれほどのものを築いたのか。しかも紀元前8000年頃には意図的に埋め戻されたと考えられています。謎だらけであることが、この遺跡の最大の魅力です。

口のない彫像と「考えること」

ギョベクリ・テペからは口のない彫像も見つかっており、「宇宙人ではないか」という話の種になりがちです。しかし口を表現しない像は、キクラデス諸島の彫像やヴィレンドルフのヴィーナス、マルタ島の出土品など、世界各地に何千と存在します。珍しい特徴を見つけたとき、すぐに突飛な結論へ飛びつくのではなく、「なぜ口を描かなかったのか」に立ち止まって考える。文字のない時代のコミュニケーションに思いをめぐらせる。それが私たち歴史学の仕事であり、この遺跡が与えてくれる最高の楽しみだと思います。詳しくはぜひ動画でご覧ください。

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