今回は久しぶりにエジプトから、テル・エル・アマルナを紹介します。新王国時代の王アクエンアテンが、アテン神信仰のために砂漠のただ中へ新しく築いた都、アケトアテン(「アテンの地平線」の意)の跡地です。
20年で捨てられた都
アマルナは何もないところに一から建設された都です。急いで造るために建物の多くは日干しレンガで建てられました。だからこそ、王の死後に都が放棄されると建物は崩れ、いまは広大な平地に基礎だけが残る、一見「何もない」風景が広がっています。しかしこれが逆に幸いして、家々の間取りや都市計画がよく分かる、エジプトでも他に類のない遺跡になりました。ネフェルティティの胸像が見つかった彫刻家の工房跡も、この都市の一角にあります。派手な神殿を期待して行くとがっかりするかもしれませんが、研究者にとっては宝の山なのです。
境界碑と崖の墓
都を囲む崖には、この街の範囲を示す境界碑が刻まれています。私も階段を登って間近に見ましたが、アクエンアテンと王妃、子どもたちがアテン神を拝む姿がしっかり残っていて感動しました。崖にはこの時代の貴族たちの岩窟墓も並んでいます。番人にお願いして開けてもらう方式なので、訪れた方はぜひ心づけを渡して見せてもらってください。
ピラミッドは壮大ですが、そこから人の暮らしはなかなか見えてきません。アマルナは逆に、王一家の人間ドラマと市民の生活が見えてくる遺跡です。歴史学を学ぶ人間には、こちらのほうが面白いくらいです。ルクソールやギザだけでなく、こういう「物語のある廃墟」にもぜひ足を延ばしてみてください。詳しくは動画でご覧ください。
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