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古代エジプトの謎9選(後編)— ピラミッドは墓か神殿か

大城 道則

素朴な疑問に本気で答える「古代エジプトの謎9選」、後編は残りの5問にお答えします。

Q5. 死ぬのが怖いから、ミイラを作ったんですか?

実は逆かもしれません。古代エジプト人にとって、きちんとミイラを作り、段取りを整えて葬られれば、来世で復活して永遠の命が得られる——つまり死は「終わり」ではなかったのです。彼らが恐れたのは死ぬことよりも「復活できないこと」でした。死後の裁判で悪事が裁かれれば復活はかないません。この死生観は犯罪の抑止としても機能した、なかなかよくできた仕組みだったと思います。

Q6. 古代エジプトの神様って万能なんですか?

古代エジプトは多神教の世界で、神々は少なくとも数百柱はいます。医療の神、愛の神、といった具合に、いわば「分業制」です。太陽神のように国家の頂点に立つ神は万能に近い扱いを受けましたが、基本的には「この願いならこの神様」という感覚——学問ならここ、安産ならここ、という日本の神社と本当によく似ています。一神教と違い、うまくいかなければ別の神様にお願いすればいい。この多様性のある世界観は、日本人には理解しやすいはずです。

Q7. ミイラは古代エジプト特有のものですか?

いいえ、ミイラの文化は世界中にあります。ペルーには大量のミイラがありますし、中国の楼蘭のミイラも有名です。私が実際に見に行ったカナリア諸島にもありますし、リビアで作られたという話もあります。日本にも即身仏がありますね。ただし、来世観と結びついた体系的な死生観のもとで、あれほど高い技術でミイラを作り続けたという点では、やはりエジプトは別格です。

Q8. ピラミッドは神殿ですか? 墓ですか?

いろいろな説が語られるテーマですが、私は「墓」だと考えています。根拠を挙げましょう。まず、複数のピラミッドから王のものと思われるミイラの一部が見つかっています。さらに重要なのが、内臓を納めるカノポス壺やその容器、そしてそれを据えるために掘り込まれたスペースがピラミッド内部から見つかっていることです。内臓だけ納めて遺体は別、というのは不自然ですから、埋葬の場であったことはまず間違いありません。

「遺体や財宝が見つかっていないから墓ではない」という議論もありますが、あれほど「ここに宝がありますよ」と主張している建造物が、数千年のあいだ盗掘を免れるはずがありません。黄金や王権の象徴であるコブラの装飾の断片も出土しています。ちなみにイギリスの研究者たちに聞くと「墓に決まっているだろう、何をいまさら」という反応が返ってきます(笑)。もちろん、墓には葬祭の場としての性格も含まれますから、「神殿的な機能も併せ持つ墓」と考えるのがよいでしょう。

Q9. 壁画の古代エジプト人って、みんな同じ顔なんですか?

鋭い観察です。壁画の人物は「理想化された姿」で描かれるのが決まりでした。しかも体はグリッド(マス目)で比率が規格化されており、足の長さも顔の大きさもほぼ同じになる。だから自然と似てしまうのです。誰が誰かは、横に書かれた名前で区別します。この「型」をあえて破って個性を強調したのがアマルナ美術で、だからこそ珍しがられ、有名になったというわけです。

当たり前すぎて聞けない疑問こそ、実は研究の入り口です。質問が集まったら、またこの企画をやりたいと思います。

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